スイス人建築家の設計による表参道の金魚鉢。地震の時、大地は揺れてもプラダ・ビルは揺れない「免震構造」です。
中が丸見えの金魚鉢

世界中に点在するPRADAの中でもひときわ目立つ外観
通称、
プラダ・ビルと呼ばれる表参道の「金魚鉢」のご紹介です。
ビルのフォルム(形)は別にどーと言うこともない、変則5角形の平面を立ち上げて上の方をカットしたような形態です。
ところが、この建物は、表層がすごいンです。設計者は、
ヘルツォーク&ド・ムーロン(Herzog & de Meuron)
と言う2人の、モコモコ博士と同い年のスイス人建築家です。
彼らは「表層の建築家」と呼んでもいいほどに、外壁の仕上げに拘ってる人たちです。
「金魚鉢」の正面
雲を反射して美しいオブジェのようです
以前どこかで読んだ記憶で、定かではないのが申し訳ないんですが、ガラスについては「スイスで設計され、ドイツで造られ、スペインで磨かれ、日本で耐候性特殊フィルムが張られた」というような拘りに拘り抜いた外壁なンです。さすがヘルツォーク&ド・ムーロンです。

夜のPRADAは映画のワンシーン
外装をガラスにした一番の理由は、建築をそのままショウーケースにしたかったんじゃないかと考えられます。プラダという建主の意向を酌んで、金魚鉢と同じようなコンセプトを実現するために、建物をできるだけ見せるような余裕のあるランドスケープ(造園を含めた建物周り)を計画し、外から見せる為の内部のインテリアや商品のディスプレーなどもデザインしたと聞いてます。

外も中もきれいです
建築家としての基本設計はヘルツォーク&ド・ムーロンの2人ですが、
意匠設計としての実施設計は日本の
竹中工務店が担当しています。
構造設計と設備設計についても同じ竹中工務店で、工事を請け負ったのも竹中です。
特記に値するモノとして、この建物にはファサード・コンサルタントとして
Emmer Pfenninger Partner AG と言うスイスの会社が参画しています。

広くてぜいたくな敷地
「ファサード」とは、建築の正面という意味です。通常は道路側の1面でしかありませんが、この建物は4面がファサードと言える程に敷地に余裕を持たせてますから、建物全面のガラスの為のコンサルタントを使ったのだと思います。
柱が一本もない建物です。
中に入ると、白を基調にした床・壁・天井に、プラダの商品が並べられて商品を際立たせる配慮を感じます。最近の商店建築では常識ともなっている「階」を感じさせないような配慮がチョコチョコとあり、地下の空間は2階まで繋がっていますし、3,4,5階も一部の吹き抜け空間で連続しています。プラダの商品ばかり見ていると気づかないかも知れませんが「あれ今何階にいるんだっけ」との疑問を持つようになります。
同時に「ん?この建物の中には柱がない」と内部に柱が一本もないことに気づいた人は、かなり建築フリークな人といえます。そうなんです、この建物は「免震構造」を採用してまして、地震がきても大地の揺れを建物に伝えないようになってます。建物は殆ど揺れませんので構造的には通常の「耐震設計」の建物のように頑丈には造る必要がないンです。
PRADAだけどシャネルのバックみたい?
ダイヤモンド型の外壁に仕込まれている鉄骨とエレベーターを囲んでいるコアと呼ばれる壁が通常の建物の柱の機能を担っている訳です。だから、建物と大地の間に隙間があるでしょ。大きな地震だとあの隙間以上に揺れる筈なんですが、あのサイズで大丈夫かなとも思っていますが、何らかの形で揺れ幅を逃げるようにできてるはずです。
はい、地震と建築のお勉強です。
この際、少々地震と建物について勉強しますか? 地震大国日本に住んでるんですもんね、ちょっと知っておくのもいいかも。
通常の建物は「耐震構造」になってます。地震が来て建物が揺れても壊れないだけの、地震に「耐える」強度を持たせています。その分、大地と一緒に建物は揺れます。日本の建物の殆どはこの耐震設計の建物です。姉歯が偽装したのも頭髪とこの手の建物です。
次に、「免震構造」。大地の揺れを「免除」してくれるように建物を大地に置くように建てる構造。

これがコンニャク・ゴムパッキン!
すなわち、建物の下に巨大なコンニャクのようなゴムパッキンを置いて、大地が揺れても建物は揺れないようにすることです。地震が治まると建物自身が動き始めちゃうので、ダンパーと呼ばれるショックアブソーバーもつけておく必要があります。自動車の好きな人であればスプリングとショックアブソーバーの関係が判ると思うけど、建物にもこの二つがないと妙な動きになってしまうンです。が、取りあえずは、免震のコンニャク・ゴムパッキンだけ知っておけば OKです。
最後に、「制震構造」。大地と共に建物も揺れますが、その揺れを建物の構造の中に吸収しようと「制御」する構造です。すなわち、電車の中で立っている人が倒れないように、電車の揺れに対して自分の筋肉と関節を使ってバランスを取ろうとするのと同じことです。超高層ビルの鉄骨は大地の揺れに呼応して揺れる所と揺れない所があるのですが、これが制震の機能です。日本の五重塔は地震で倒れたことがないのは木組みの中にこの制震の柔らかさを持っているからです。
商品が美しいからこそできる建築です
以上、簡単に説明すればそういうこと。で、プラダはこのコンニャクの上に乗っけてある「免震構造」のビルです。スペシャリストの構造技術者の知恵で、地震の揺れを解析し、ゴムパッキンの材質や大きさ、形状などを決め、ジェネラリストの建築家や意匠設計者と協議しながら全体の構造やデザインを決め、建設している訳でございます。
鉄骨構造の地下2階、地上7階の建物です。入り口前の広場は免震設計の地下階の屋上扱いですから地震の時には揺れないはずです。近々に来るであろう東京大震災の直前にプラダ前の広場にいると大地は揺れません。
博士!今日のポイントを抑えてみました。
プラダ、金魚鉢、表層、ガラス、ヘルツォーク&ド・ムーロンのプラダ、ファサード、免震構造、制震構造、コンニャク・ゴムパッキン
最後に「五重塔」日本の大工も偉い!!
次回のたてもの観察ゼミは
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「Dior表参道」です!