今回は「表参道の入り口に立つ建物として『ONE 表参道』と名付けた」という、謎の命名のビルです。
大胆なフォルムを街並みで主張しているビルです。

表参道の交差点から

上の方は2層分、
7階8階部分の吹き抜け。

ここから交差点を見てみたい。
このビルのファサード(建物正面)は、表参道の街路樹に面して50メートルもあるんです。ほぼ100%の建坪率を持つ妙な格好の敷地で、敷地形状にぴったし合わせるような平面をしています。そのために、表参道の信号機の所からは6メータにも満たない側壁が見え、その5,6階部分をテラスとして欠き込んでますね。片持ちで張り出した7,8階の吹き抜けをガラス張りにして、大胆に街並みにそのフォルムを主張しています。

ここの巾はわずかに6m。
土地と建物を持っているのは印刷機メーカーで、建物を一棟借りするのは
LVMHファッション・グループ・ジャパンという会社です。
ルイヴィトンを筆頭に 40 社以上を傘下に納める、
著名なブランドをいくつも所有するファッション関係の会社です。低層階に4つの
ブランド店が入り、上階はルイヴィトンなど数社のオフィスとショウルームになっているようです。ブランド好きな女性にとっては、こういうビルって垂涎なのかしら。

クリックすると
ONE OMOTESANDOの看板が。

ファサードの全長は約50m。

僕には関係のないブランドが並ぶ。
木製ルーバー(羽板)の裏側に隠された驚きの細工。

そろそろ汚れだした5年目のルーバー。
このビルで見るべき所は、ファサードを形成する木製の
ルーバー( Louver・羽板 )です。「都会の建物で木を使うことに挑戦したかった」と設計者の
隈健吾(くま けんご)氏が話してるみたいですけど、
商業地域であるここに建つ建物は延焼を確実に防止しなくてはならないわけで、木のような燃える材料でファサードを作ることは建築基準法上できないんです。
「挑戦したかった」という意味はその辺にあって、できないことをやってやろうじゃないの、と言うのが設計者の素直ではない試みであり、挑戦な訳ですよ。私もそうだけど、なんか
ダメって言われると、やりたくなっちゃうんですね。建築家の困った習性ではあります。
そんな建築家の妙な拘りを実現するために、このルーバーの裏側にチョットした細工があるんです。それは
ドレンチャーと呼ばれている水の排水口が隠されているんです。全部の木製ルーバーの裏側に2.4メーター間隔で水道の蛇口みたいなモンが設置されてるんです。建築家の「挑戦したかった」の拘りの為に、かなりのお¥を掛けてサッシの枠に水道管が配管されているんです。

ね、汚れてるでしょ。

間隔は60cmです。

裏にはドレンチャーがあります。
ルーバー1本の長さは25メーターぐらいあるわけで、2.4メーター間隔にドレンチャーがあれば、一本あたり10個あるってことですな。で、ルーバーが60センチ間隔で50メーターのファサードをカバーしているってことは、ルーバーの本数は83本かしら。ならば、計算上はトータル 830 個の蛇口が隠されていることになりますかね。スゲー量で、正に驚きですな。んなことやってもいいのかいな、って思うのは気の弱い私だけ? 建築家・隈健吾はやっちゃうんですね。
たぶん、この建物が存続している間に延焼防止の為に、この 830 個ほどのドレンチャーから一斉に水が噴き出すことはないとも思うけど、一度ガソリンを積むタンクローリーでも建物の前で転がしてみたいような気がしないでもない。
このような形で木を使うと・・?5年前と比べて。
これだけ並ぶと迫力です。
このような形で木を使うと、たとえ防腐材を塗布してあっても、木はだんだん黒ずんでくるのが普通ですね。5年前の竣工時、私の一番の心配がそれだったんですが、案の定、5年の経年変化で、少々黒ずんできてます。竣工当時の木板の美しさはなくなっています。通常は、あのような板状の木は直射日光や雨の当たるところには使わないんですよ。どうしても使いたいときには
無垢材を使うんですが、このビルでは集成材を使ってます。もう少し経つとひび割れてくるような気もしますけど、何か特殊加工でもしてあるのかしら。
参道からの全景。
まー無垢板なんかを使うととんでもない金額になるし、直射日光にさらされると、間違いなく板は反ってきますんで
集成材を使いたくなるんです。無垢板、集成材にしろ木は暴れたり反ったりするもんなんです。だって「板」っていう字は「木が反る」って書くでしょ。反って当たり前なんです。集成材は雨に濡れたり、直射日光を受ければ必ず割れます。窓越しのカウンター・テーブルに集成材を使うと、ものによっては、一夏で割れが生じます。雨に濡れるような所で使えば、それはもうさんざんな目にあいますもんね。
私の山荘・宅庵(タクアン・長野県八千穂高原)のテラスは既に10年間雨風にさらされ、かなり腐りかけてますね。昨年の夏には、ワイフの体重に耐えきれず、腐っていた床板が足と共に落ち、太腿、オケツの所で止まり。ワイフは危うく数メーター下に落っこちるとこでしたもん。このビルも、あと5年の10年後の経年劣化がどうなっているのか、心配するところではあります。
因みに、ルーバーはカラマツの集成材に防腐塗料が塗られています。断面の大きさは、厚さは100ミリから12ミリの二等辺三角形のような断面で、出は450ミリです。建物の構造は鉄骨造、地下2階、地上8階で、竣工は5年前の2003年です。
カー) 近寄って見てみたくなるよ。
ビー) 弱いところを持っている建築なんだね。
カー) 弱い?建築物なのに?
ビー) 弱さや意外なものは時に人に好かれるのさ。
カー) ・・・。
ビー) 何してんの?
カー) 目盛り消してんの。
ビー) まだ早かったかもね。君に紹介するには。