



裏道に隠れ建つ商業ビルです。私、この建物、好きなんです。奥ゆかしさを感じます。表参道の大通りから一歩入ったところあって、私もしょっちゅうこの前の道を歩き、ワイフの誕生日のプレゼントに、1階の真ん中の店、IBIZAでバッグを買ったこともあります。
この建物には、値の張る仕上げ材が何も使われてないんです。少なくとも外壁、外観はごくありふれた建築資材ばかりです。時に著名な建築家先生が嫌う押出成形セメント板などを平気で使ってるし、鉄骨造であることを露骨に出しています。安価に建物を建てていることをそのまま素直に出しているところに好感が持てるわけです。
かといって設計に手を抜いていると言うことではないんです。設計には、かなり拘りを感じる建物です。だから、私はこの建物が好きなんですけどね。実にきちんと、設計されています。設計者の拘りも感じるわけで、鉄骨を露出させるところはきちんと露出させ、見苦しくならないように設計しています。鉄骨に慣れているのか、過去の経験が生かされている建物で、設計者の熟練と経験を感じます。調べてみると、私と同い年でした。若い優秀な意匠設計者は世の中に沢山いますが、若い彼らにはマネのできない、習熟した経験に裏打ちされたディテールを感じます。オジサン、頑張ったジャン、って感じですな。
設建物は、モリハナエビルの角を入って直ぐの左側にあります。クレヨンハウスの手前です。2002年8月に竣工した、鉄骨造の建物で、地上3階建て、設計は北山恒(きたやま こう)氏です。現在は、横浜国立大学大学院で教授をされてもいます。「北山恒+architecture WORKSHOP」という設計事務所の所長さんでもあります。設計の業界にいる人の間では、著名な人ではあります。
北山さん自身が「残念なことに、第三者の手で大幅にファサードが変えられ、当初のコンセプトは壊されてしまいました」と書いていますが、1階ショップ前にガラスの天井を持った回廊のようなモノが増築されています。建築家の性(さが)ではあるのですが、自分が設計したモノに勝手に手を加えられて、お怒りのようです。私だって、自分が設計したモノを勝手にいじくられると、心中穏やかならざる心境で、納得の行かないモヤモヤは晴れませんね。「なんで建主は、オレに一言、言ってくれなかったんだ」てな感じで、何となく不愉快ではあります。
だけど、北山さん、そんなに怒らなくてもいいですよ。この建物のコンセプトは生きてます。ただ、雨の日にお店への出入りの時に、傘をさしたりつぼめたりするスペースが、やっぱ、どうしても、欲しかったんですよ。雨の日には外部に開くドアの内側にも雨の雫は付くし、使い勝手上、こっちの方がいいんですよ。
確かに、違和感のあるガラスの回廊ではありますが、どなたが図面引いたか判りませんが、ちゃんと、北山さんのコンセプトを壊さないように地味に造ってるじゃないですか。「これは、もう、オレの作品ではない」なんて事は言わないでしょ。いい建物は、この程度のことで、とは言っても大きいけど、当初のコンセプトは壊されてはいません。私は、この回廊は無いものとして建物を見ました。
緩い坂道に対して鉄筋コンクリートの基壇をつくり、目線をショップの下の方に置いたのも正解ですし、道路境界部分に竹を植え、ワイヤーで固定するアイデアは秀逸です。私は、このワイヤーのアイデアをどこかで使いたくてウズウズしてますモン。ステンレスのルーバーにしても、表参道交差点そばの隈健吾がやった「ONE 表参道」のルーバーより、はるかに好感がもてますね。無理に、時間がたてば腐ってしまうような木より、素直に錆びないステンレスを使った方が正解ですよ。
私は気が小さいので、でかいカメラ持って2階の美容室(afloat-f)に上がることはできませんでしたが、内装は永山祐子女史のようで、3階部分の「最上階に空中に浮かぶ中庭をもつ」とお書きになっている部分も見ることができませんでした。外観だけからも「単純なハコ」の中に、複雑な意匠の意図が読み取れ表参道の建築のグレードを上げる一翼を担っています。
いい建物です。表参道フリークの皆さん、是非、見に行きましょう。