

間もなくして、2人のメイドはブースから出てきた。 ガウンを羽織りながらこちらへ
向かってくる。
僕は、おもむろに席から立ち上がり、真っ直ぐに彼女達を見据えた・・。
今だ。
「あの、すみま…」
何て事だ・・。 僕は、自分の用意していた台本とは違う展開に戸惑った。 完全に声をかけるタイミングを逃してしまったではないか。
彼女は屈んで荷物を手繰り寄せている。 僕もその荷物を一緒に拾おうとした。
幾分かダブついている彼女の衣服の胸元部分から、ふくよかなものが明け透けに現前する。
不意に彼女は立ち上がり、言った。
「ども・・すみません。」
どうも、とさして意味のない言葉をつぶやく僕の目の前を、おさげの彼女は軽く会釈をして
横切り、去っていく。
僕は、その姿が視界から消えるまで、彼女を見送っていた。
それが、僕が彼女を見た最後となった。
まあやが言った。
「楽多。 俺、何だか今回はいい記事が書けそうだ」
「そうか、それは良かった。」
「楽多も、今日は取材に来た甲斐があったろ?」
「行った甲斐・・・。」
あのメイドの彼女とは、もう会う事はないだろう。 しかしそれ自体は問題じゃ、ない。
彼女との、ガラス窓一枚隔てて一瞬交わされたあのやり取りのみ、それこそが。
当初どんよりしていた僕の気持ちも、枯渇していたブログ記事の執筆力をも回復させうる、
まさに干天の慈雨ともいうべき程に重要な出来事だったんだ。
それがたとえ、ほんの僅かな時間の共有だったとしても。
それだけで、今日の取材は行くに値したのだ。
「そうだな。 行った甲斐は・・・もちろん、あったさ。」
晩春に相応しい、やわらかい日差し達が僕らを包み始めた。
その陽気のせいだろうか、幾分軽くなった僕の体は、ここへ来る前の気だるささえ忘れて
しまったかのようだ。
今は、僕の体から外に出たがっている記事の案が、たくさんある。 会社に戻ったら、さっそく
書き始めよう。
あの時の一瞬一瞬を、こぼさぬ様に、精一杯の善意に込めて。
ゆるやかに暖かな日の光は、
もう間もなく、本格的な春の終わりを告げようとしている。
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■たこ焼き店『浪速や(なにわや)』 ■表参道ランデブー『メイドステーション』 |
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興奮のうちにシャッターを切るまあや |
・・えーっと、前回の続きです。
前回は、まあやと楽多が思うままにスイーツパラダイスで飯をひとしきり食べた後、
ふと我に返って一息いれたところ、まででした。
しかし、私は気づいてしまったのです。 アンニュイな空気に包まれながら一息ついている
まあやを見て・・。
これはひじょーによろしくありません。 相手のペースに飲まれている・・!
一息入れると、たちまちにこの店内を彩るピンクの世界の住人になりそうです。 一瞬たりとも気は抜けないのであります、男達は。
いや、てゆうか俺らが勝手にそう思い込んでるだけという意見も、一方ではあります。 うん、言われなくても、分かってる。
ダメだダメだー。 まあや、食うんだっ。
私は休息もそこそこに、再び目の前の食べ物に手を伸ばします。
この店内で何もせず佇んでいたら、たちどころに押しつぶされてしまう。
言うなれば、ダメだ寝ちゃダメだ、寝たら体温が低下し死んで
しまう!というのと同じ感覚でしょうか。 意味が分かりません。
…でも、浮くなぁ。
もう、やりようねぇな。 普通に食えばいいんじゃね? だよなー?
←豪華なラインナップです。
「楽多、心してかかれ」
「そっちもな。・・グッドラック」
思い思いにデザートを取ってゆきます。
でも種類が多すぎるので、今この第一陣は適度に取るのみで、
それを平らげたのちに、第二陣として再び取りに来ればいいと思います。
いっぺんに山盛りに取る必要はないのです。 時間はまだ、ある。
・・って言ってるのに、二人ともついついケーキを取る手が休まらず、たちまち皿は定員オーバーの様相を呈しております。
心では取り過ぎだっつってんのに、手はその意に反して勝手に動いてしまう。 あれ、俺ってエイリアンハンド症候群だったっけか?
そんな疑問さえ浮かんでしまいます。
ケーキだけでなく、各種プリンやアイス、カキ氷まで
完備。
又、洋風デザートのみならず、和風もキチンと押さえているのが憎いところであります。
しかしこうも色々並んでいると、どいつもこいつも食わなければ、食わなかったやつが可哀そうみたいに思えて来るのを禁じえない。 そこで、はたと気づく訳です。
俺ら、食う量の配分、間違えてなくね?
最初の飯を、調子に乗ってハイペースで食いすぎて
しまったのだ。 これは、痛い。
食いたいのは山々なのだが、お腹いっぱいのコンディ
ションでデザートを食べても、食べてるというよりただ口に入れる作業みたいな、なんならただの罰ゲームになってしまう危険性すら、ある。
1480円払って、罰ゲームって! 考えられへん。
何故こうなってしまうのでしょう。 食べ放題に行くと、いつもこうだ。
これはひとえに、根が貧乏性なのがイケないんだ。 こんちくしょう貧乏性。
結局、志半ばで戦いを終える事に致しました。 つまり、全品制覇は出来なかったのであります。
周りをふと見渡すと、お皿を3枚も4枚も重ねている女の子は、ザラなのです。
どんな仕組みで、その量がお腹に入ってるのさ。
俺らはまだまだだな・・と猛省したのでありました。
ただ、それでも全品を制覇出来なかった方もいるかと思います。
又来ればいいんです。 たかが1480円です。
スキー場のレストランのカレーとかよりも全然安いはずです。 ピザーラのMサイズ頼むより
安いはずです。 回転ずし屋行けば、これ位簡単に食べちゃう値段です。
さぁ、お得感で言えばどちらがいいのか、もうお分かりですね。 竹下通りを通るなら、
SoLaDo(ソラド)原宿を確認する事を、お忘れなく。
スイーツパラダイスへ行くか行かないかは、貴女次第・・。
ただ皆さん。
今は5月。 もうすぐ、海の季節がやって来るという
事も、お忘れなく。
ビキニを着るか着ないかは、貴女次第・・。
お後がよろしいようで…(よろしくない)。
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いざ、ゆかん |
先日のまあや取材レポを受けて、いよいよ私もスイーツパラダイスの事をお伝えしようかと
思います。
私、スイーツの為ならこの命をも投げ出す覚悟がある事で、巷では有名であります。
でも、実際には投げ出しません。 大人だから。
或いは、目の前にスイーツの山と西山茉希が現れたならば、私は間違いなくスイーツの山を
選択する事でしょう。 そもそも西山茉希をあんまよく知らないから。
そんな次第で、まあや隊員とパラダイスへ突入することになった訳だが、しかし、一抹の不安が我々にはありました。
何故ならある情報によると、店内はピンクを基調にした艶やかな装飾に彩られ、とてもじゃないけど少なくとも野郎二人で出向く場所じゃないらしいからです。
でも行くしかねぇよ、というむやみな気概の元に、その先にどんな困難が待ち受けていようとも、我々は難攻不落のパラダイスへ果敢に立ち向かう決意をする運びとなりました。
2000円札を入れます。(ウィーン)
「大人」を選択します。(ポチッ)
券が出てきます。(ストン)
お釣りボタンを押します。(ポチッ)
そしてお釣りが出て・・来ねぇじゃんっ! お!?
むぅ・・。 早くもこんな所に巧妙なトラップが仕掛けられていたとは…。
まあやは、笑っております。
早々に時間をロスです。
店員が鍵で機械を開け、お釣りを取り出しようやっとで入店となりました。
食券には入店時刻が明記されており、その時間から70分がスイーツのパラダイスの恩恵を受けられるタイムリミットであります。
「お姉さん、これ入店時刻、今時間ロスした分差し引いといてね。」
私は、店員にそう通告する事を怠りませんでした。
「こ、これは、全部オレのもんやー!」
私は、声高らかに店内にそう宣言する事を忘れませんでした。
「いける・・俺はいける・・。」
いける、って何さ。
うーむ。 やはり今日は飯抜きで来た甲斐があったってもんよ。
ここぞとばかりに喰らってやるわい・・。 体が火照って来たわいや・・。
アナタどこの人だよ、という口調で、しかし且つ冷静な思考で、
どれを食うか迷う楽多。
まさに冷静と情熱のあいだ、であります。
実はご飯ものも、種類は豊富。
パスタやらカレーやらシチューやらサラダやら、
何でもこい。
まず、お皿と箸・スプーン類を棚から取って、食べ物の元へ。 ちなみにお皿は、盛った食べ物を食べ終える
度に新調します。
まあやはカレーに注目していたらしく、それに手を伸ばしております。
私と言えば、特に何ら考えておらず、というか基本的にNo Planまっしぐら、みたいな人生なので、目についた
もの手当たり次第に皿に盛ります。
飲み物もチョイスします。
ドリンクバーみたいなものですね。
私は、ここは男らしく「なっちゃんオレンジ」で行かせて
頂きます。
遂に出現、堂々たる昼食の面々であります。
この店が“食べ放題”というキャッチコピーを振りかざしている事も相まって、我々の心持ちもピークへ。
しかし何なんでしょうね、この“食べ放題”という言葉の持つ魔力は。 このフレーズさえあれば、我々みたいな貧乏人も金持ってる人もみんな寄って来ますからね。
マックにベンツで来る人もたまに見るし。 いや関係ないけど。
でもベンツ乗ってんのに、何もその足でマックって!
「(二人でハモりながら)いただきますっ」
幼稚園のお弁当時以来のいただきます斉唱ののち、我々は食し始めました。
まあやはもう、カレーをかき込むスピードが速すぎて、右手がブレております。
私も取りあえず、この後残っている仕事の事とか今後の日本の少子高齢化とかを一切棚上げして、おいしく
頂く事に致しました。
しかし食べている内、
「これ、あんま調子こいて食ってたら、デザートに辿り着く前に志半ばでくたばってしまわね?」
という疑念を抱き始めました。
我々は唐突にわれに返り、かき込む手を休め一息つきがてら、ふと店内を見渡してみるの
でした…。
つづく。
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